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レネ・クラル & 北仲スクール

e0105010_2182226.jpg 11月9日に大学で、デンマーク王立芸術アカデミー建築学部のレネ・クラル(René Kural)先生のレクチャーが行われた(右写真)。レネさんとは、僕が東工大の大学院生だったときに、彼が研究生で来ていたときからのつき合いだから、もう足かけ16年来のおつき合いということになる。僕がドイツへ留学する前にもちょうど日本へ来ていて、ドイツ語の先生をお願いしてしまったり、留学中にコペンハーゲンへ行った折りには自宅へ招待してくれたりと、たいへん世話になっている恩人である。その後僕が帰国した後も、彼がちょくちょく日本へ調査研究で来るたびに、なにかと定期的に会っていた。今年の3月も坂本研究室最後のゼミのときに会った。そのときに国際交流の話をしたのだが、それが今回、本学の学長との面談や打合せへと展開してきた。そして、せっかくの機会だからということでレクチャーをお願いしてしまったのである。

 日本語では、デンマーク王立芸術アカデミー「建築学部」と訳しているが、英語ではRoyal Danish Academy of Fine Arts, School of Architectureといい、むしろ完全に独立した建築のみの単科大学である。デンマークでは、こうした建築大学が、コペンハーゲンとオーフスに2つあるのみで、建築家になろうと思ったらこれら2校に行くほかにほとんど道はない。とくにデンマーク王立芸術アカデミーは18世紀から続く名門であり、卒業生にはヤコブセン、ウツソン、ケアホルムなどの巨匠が名を連ねる。そのような学校だからお堅いのかなと思いきや、実はたいへん現代的でユニークな活動をしているのである。とくにレネさんがディレクターを務める「スポーツ建築センター」などはそのひとつといえる。スポーツ建築といっても、別に競技場や運動場のことだけをやっているわけではない。レクチャーでは、ある巨大な工場跡を集合住宅にするプロジェクトを紹介してくれた。集合住宅といっても、建物よりもむしろ外部空間をどうデザインするのかが重要で、彼の計画では、誰も自由に、様々な運動やスポーツを日常的に楽しめるような工夫がされていた。またコペンハーゲンでは、誰もが都市の海で泳げるように巨額の予算を投じて水質が改善されたという。その風景は写真で見るだけでも刺激的で、いわば東京の日の出桟橋とか横浜の山下公園とかから、人々が自由に海に飛び込んで泳いでいるような風景が、現実のものとなっているのである。日本の都市でもアーバン・スポーツは盛んともいえるが、それはパブリックというよりもまだまだコマーシャルの域を脱していない。コペンハーゲンのいくつかの試みの面白さは、それが完全にパブリックになっていることである。こうした試みは、もはや単なるスポーツを超えてフィジカルな健康増進や娯楽であり、また建築を超えて都市というべきである。これは日本の都市空間をアクティブにするうえで、たいへん示唆に富んでいるし、実践の可能性も大いにあるはずだと感じた。

e0105010_22478.jpg 折しも、レネさんのレクチャーの数日後(11月19日)に、北仲スクール(横浜文化創造都市スクール http://www.kitanaka-school.net/)のプレ・オープニング・セレモニーが、馬車道のヨコハマ・クリエイティブシティ・センター(YCC)で行われた。これは横浜国立大、横浜市立大、東京芸大、神奈川大、関東学院大、東海大、京都精華大の7大学連携により運営される「学校」で、今年度後期の試行授業ののち、来年度正式に開校する。その内容は各大学の教員参加により、都市文化系(アート系)と都市デザイン系(建築系)の2系列の講義やワークショップなどを行う予定となっているが、個人的にはなんとなく、都市を思考するうえでの切り口が、もう少しあるといいと思っていたところでもあり、今回のレネさんの話はたいへん参考になった。ところでセレモニーでは、林文子横浜市長が挨拶されたのだが(右上写真)、そういえば以前黄金町バザールで中田前市長の挨拶を聴いたことを思い出した。こうした横浜の都市づくりへの試みは、市長が変わってもぜひ続けていってほしいと思う。(N)
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by nodesignblog | 2009-11-30 02:11