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2009東アジア4大学建築学術交流セミナーin台北

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少し前になるが、7/30から8/12まで、今年で4回目となる「東アジア4大学建築学術交流セミナー」が台北(台湾)で行われた。4大学とは、今年のホスト校の国立台湾科技大学、武漢理工大学(中国)、成均館大学(韓国)、神奈川大学(日本)である。このセミナー、もとは個別の大学間交流であったものを、当時の高橋志保彦教授(現名誉教授)が中心となって合同の交流プログラムに拡大・発展させたものである。毎年開催地を順に変えて行われており、各都市の特定の敷地を課題としたワークショップを通して、東アジアの都市や建築について相互理解を深め、激動する現代東アジアの都市のあり方を考える貴重な機会となっている。今年、神大からは6名の大学院生と、重村先生、山家先生、佐々木助手と僕が参加した。

今年のワークショップ課題は、台北の中心市街地に残る日本式住宅地区(上写真:筆者撮)の再開発である。台湾は20世紀の前半、日本によって統治されていた。現中華民国総統府(旧台湾総督府)の建物などは、日本が建てたことがよく知られているが、当時の日本式住宅もまだ少なからず残っており、台北市は、それらを史蹟として改修保存しようとしているのである。今回のワークショップは、そうした住宅が集まる区画を、保存改修などを含めてどのように活用するかを計画させるものだった。

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台北は19世紀末頃にできてきた新しい都市だが、その骨格は日本統治時代に形成されたという。街を歩くと、とくに旧市街では、1階をセットバックした建物が連なる(写真:筆者撮)。「騎楼」とよぶそうで、元は中国人(福建)が東南アジア全般へ広めたという話だが、当時の日本統治政府は、そうした伝統的な建築言語を都市計画に取り入れたというから、ちょっと驚いた。総督府のような洋風様式建築を建てながら、日本式住宅も建て、かつ土着の「騎楼」型都市建築をも組み込むというのは、近代的都市計画からみると脈絡がないようにも思えるが、必要な場面で必要な形式を配するという点ではとても実際的で柔軟な姿勢といえる。実際、今回の滞在中は、台湾で多数の死者が出た台風に直撃されたが、大雨のなかでも「騎楼」のおかげで町中をなんとか移動することができた。亜熱帯の気候にはまさにうってつけである。

敷地周辺は、まさにこうした多様な建築言語が混在している。学生6グループの提案には、縁側や騎楼に着目した提案も見られ、興味深い内容のものもあった(詳細は神奈川大学建築学科HPに掲載予定)。思えば横浜も、台北と同じような時期に成立してきた都市であるが、アジアの近代都市を考えるうえで、とても勉強になった。僕にとっては初めての台湾であり台北であったが、騎楼がつくる通りの夜市には人があふれとても活気がある。新市街では一転して東京のお台場のような新しい街ができ、超高層ビル台北101がそびえる。また人々の振るまいも日本人に近い穏やかさを感じたし(中国とは全然違う印象で正直驚いた)、食べ物もすばらしく美味しい。とても楽しく居心地がよい街だった。
なによりも、ワークショップの成功にご尽力いただいた、今回のホスト校であった国立台湾科技大学の先生方には、深く感謝したい。なお来年は、神奈川大学で開催の予定である。(N)
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by nodesignblog | 2009-09-13 20:03

千葉学、「建築と日常」、香山壽夫

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今週は僕としてはめずらしく、パーティーにふたつも行ってきた。ふたつは互いに無関係なパーティーだったのだが、奇しくもある共通人物がいて、それに興味をもった。

9月2日は、千葉学さんの学会賞受賞記念パーティーが六本木の国際文化会館で行われた(右写真:筆者撮)。千葉さんには何年か前に前任校の非常勤講師で2年間来ていただいたが、そのころに計画されていた、「日本盲導犬総合センター」がめでたく受賞となったわけである。小さな建物が集合し、屋根付きのうねった通路がそれらを結んでいる。千葉さんの建物は、槇文彦さんも祝辞で「切れのいいスクール・オブ・トウフ(ちなみに反対はスクール・オブ・パスタらしい)」と喩えていたが、いつもやや硬質な感じというか、かっちりしすぎている印象があるが、この建物は、犬というデリケートな動物を扱うからか、あるいは富士山の絶景(敷地はあのオウム真理教富士山総本部跡地とのこと・・・)への配慮からか、とても柔らかい印象の建物になっているように思え、素直によい建物だと思った。

ところで、意外に感じる人もいるかもしれないが、千葉さんは東大の香山研究室出身である。ということで、香山壽夫さんが祝辞を述べられた。実は2つのパーティーの共通人物とはこの香山さんである。建築家としての香山さんというと、古典的モチーフや対称軸を使った、大文字なデザインの印象が強い。またその研究は、H.H.リチャードソン研究が有名だが、アメリカの新古典主義建築を題材にした形態構造分析に関するものである。実は、僕がいた坂本研究室で構成論を構想しているときには、香山さんの研究は重要な既往研究として、参照対象であり批判対象であった。こちらのスタンスは、常にそうした幾何学的な形式論からの距離をはかるようなところにあったともいえる。そのような意味で、仮想敵というと大げさだが、批判的に意識しつつ、一方では建築の形式論という関心を共有する同志?のような印象を、一方的に抱いていた感じもある。

千葉さんの会での祝辞では、槇さんの名祝辞との差をつけるためもあったと思うが、そうした形式研究者の香山さんらしく、千葉さんの建物の幾何学的な方法について語られていた。しかし上でも述べたように、この建物はたしかに構成は幾何学的なところもあるが、ひとつひとつのシーンや場所があつまった、もっとゆるい領域のようなやさしいデザインがみられる。これまで香山研関係では、たとえば小林克弘さんのように、幾何学的な形式を標榜するようなイメージが強烈だったせいか、千葉さんの、とくに盲導犬センターで前面に出てきた、こうしたやさしい感じは、あまりつながりを感じない印象があった。
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千葉さんと香山さんってどういう風に結びつけられるのかなあと思っていたのだが、その答えにつながるヒントを与えてくれたのが、9月4日に刊行記念パーティーがあった、編集者の長島明夫さんによる「建築と日常」という新しい雑誌(当人は個人誌といっている)である。長島さんとは、彼がエクスナレッジにいたころ、「住宅70年代・狂い咲き」とか「ザ・藤森照信」、「住宅デザインの教科書」といった本に協力したつながりである。退職後、雑誌を出すと聞いていたが、本当に出したのである。このご時世に、自ら雑誌(個人誌)を刊行するとは、たいへんな偉業であると、香山さんが祝辞を述べていたが、このNo.0号に、長島さんによる、香山さんへの興味深いインタヴューが載っているのである。その内容は、ぜひ本で実際に読んでほしいので、詳しくは触れないが、ヴェンチューリやアレグザンダーについての興味深い話や、形式研究の根底にある香山さんの考え方がとても面白い。宗教や共同体、持続性の話など、どれも千葉さんの盲導犬総合センターのあり得べき姿とも重なるようでもある。とまでいうと言いすぎかもしれないが、千葉さんの感性には、こうした香山さんの思想の影響が大きくあり、それは形式研究のバックボーンとしての香山研究室の良き遺伝子なのだと、勝手に確信した。

ところで、「建築と日常」には、僕も設計に関わったTokyo Tech Frontについての坂本一成さんのインタヴューも載っている。坂本さんのスケールの話もとても興味深く、香山さんの話と比較して読むと、両者の共通点と相違点が面白い。だいたい香山さんと坂本さんとを2本柱にして並べて本にしようという長島さんの試みが大胆すぎて面白い。「建築と日常」、ぜひ買って読んで欲しい。(N)
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by nodesignblog | 2009-09-05 21:14