去年の夏から、建築家で神奈川大学非常勤講師のベラ・ジュンさんと一緒に「神奈川海辺研究会」というのをつくって、夏の海の風景や海の家などの調査をしている。今年の夏は縁あって、鎌倉中央海水浴場(由比ヶ浜と材木座の間)の 海の家の前に、研究室の学生らのセルフビルドで小さな木造の小屋を建てた(7月頭~8月末)。 そもそもは、昨年夏に海の家へ取材にうかがった際、オーナーさんが、2013年から地域住民向けの「浜の盆踊り」を開催しているが、そのヤグラを借りるのが結構かかるので、既存のパラソルや浮きボート、ビーチチェア等の貸出小屋をリニューアルして、ヤグラと兼ねられるといいなあ、と呟かれたことが発端である。 ちょうどその頃、こちらはいろんな海水浴場を見て回って、あまりにも商業化された派手な海の家ばかりが目立つ海辺の風景に違和感をもち、もっと海辺そのものの環境を楽しめるようなあり方はないのだろうかと感じていた時で、海の家という建物ではなく、パラソルやビーチチェアみたいな家具的なものとか、浜を会場にした盆踊りといった、人と海辺をより直接結びつけてくれそうなキーワードに引かれ、協力することになった。 貸出小屋と盆踊りのヤグラ、別々ならごく単純な小屋で済むのだが、両者を兼ねようとすると意外と難しい。たとえばサイズ。貸出小屋としてはシーズン中ずっと浜に建っているので、目障りにならないようになるべく小さくしたい(最大でも既存小屋の約1坪ぐらい)。一方盆踊りのヤグラは、上で踊りの師匠数名が踊るので、最小でも約1.5間四方は必要である。また高さの問題もある。既存の貸出小屋は、用具を砂や波から守るために約600mm高床で、従業員が入れる天井高があるため、軒高は地上約2600mmある。しかし盆踊りのヤグラとしては、あまり高いと上で踊る方たちが怖いし、地上で踊る人たちからも見にくいので、できるだけ下げたい。また、ヤグラ上部には提灯や照明などを吊るためのフレームも必要である。さらに、貸出小屋は用具管理と雨・風・砂からの保護のためにできるだけ閉じる必要があるが、昼間の営業時や盆踊りのヤグラとしては、できるだけ開放的でオープンなものにしたい。そのうえ構造的には、簡便でありながらも、過酷な強風や高波に対抗し得る十分な強度が求められる。 一方、貸出小屋とはいえども何らかのかたちで、海辺の環境をシンプルに体感できる、居心地の良い場所に成り得る提案であることを目指した。問題はそれがどう実現できるかということだったが、いろいろ考えた挙句に最後は素朴な「日影」に行きついた。強烈な日差しの元で浜辺を歩けば、日影の快適さは理屈抜きに体感できる。そこにささやかな床でもあって座れて、風が吹いたりしたらもう十分。むしろ他の余計なものはない方が、海辺そのものを体感することができるはずである。 ということで、浜辺に浮かび、日影をつくり出すシンプルな一枚の屋根がイメージされた(上写真)。盆踊りのヤグラとして使える1.5間四方のプレートを、斜行した柱によって持ち上げている。 (つづく)(N)
by NODESIGNblog
| 2015-08-24 19:45
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