Hide Nasu 水鏡

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大学の研究室内に、ドイツのフランクフルトを拠点に活動されている那須秀至(Hide Nasu)さんの作品を設置した。

「水鏡」あるいは「鏡池」とも題された作品で、その物自体は、大きさは1200mm四方、縁の厚さ40mmの、大きな四角いお盆のような形状のものである。その表面は真黒に塗装されていて、表面には蝋が塗られている。だが作品の実体はこの物自体というよりも、そこに張られる水である。お盆のなかに少しずつ水を注いでいくと、その質感がだんだんと消えていき、そのかわりに水面、というよりは、もうひとつの空間のようなものが、じわじわと浮かび上がってくる。縁ギリギリまで水を注ぎきると、まるで床に正方形の穴が開いたようにも見え、同時にというかあるいはというか、その向こうにもうひとつ別の空間があるようにも見え、不思議な奥行きが生まれる。

水たまりに反射しているだけ?と思われるかもしれないが、そのようなありふれた感覚とはだいぶ違う。なぜだか不思議で、たぶんいろんなことが作用しているのだと思うが、たとえば、普通の水たまりというのは地面の表面よりもややへこんで見えるものだが、この40mmの厚さというのがまた絶妙な感じで、あたかも水銀のように地面(床)から微妙に盛り上がり、しかも自然にはあり得ない正方形をした、不思議な、得体のしれない隆起した水たまりのようにも見える。

この作品は過去に何度かギャラリーの空間で見たことはあったが、こうして自分の日常的な空間に置いていると、やはり感じ方がずいぶん違う。設置して約2週間が過ぎたが、研究室のごくありふれた床に突如開いたこの不思議な空間の表情は、一日の時間の経過とともに変化するし、また表面に少しずつ浮かぶ塵の感じやちょっとした風による揺らぎ、水の量などによっても変化する、まるで生き物のような感じがある。魚を飼っているわけでもないのに、水を時々足したりしなければいけない点も、なんだかこの作品自体が生き物のようであるかのように錯覚させる。もはや設置してあるというよりも、飼っている状態である。こういうふうに、とかく非日常的にしか体験できないアートを、なんだかペットか何かのように日常的に「飼う」という感覚はとても新鮮であり、学生たちもこのよくわからない生き物のようなアートを飼うことになれたようでもある。

那須さんのHP(http://www.hide-nasu.net/)を見たところ、屋外などに置かれた「水鏡」もあるようで、また印象が異なっていて興味深いものがある。そのほかの那須さんの作品は、この「水鏡」にしても、和紙に顔料と蝋を幾重にも重ねて、なんとも言えない奥行きをつくり出す作品にしてもそうだが、不思議な空間的感覚に満ちている。先日コペンハーゲンへ行ったときにも古い友人であるレネ・クラル先生へ那須さんの作品を贈ったが、とても喜んでくれた。彼らから見ると、日本的な感覚も感じたようだった。来月の5月中旬から、KANEKO ART TOKYOというギャラリーで個展が開かれるとのことで、新作も出品されるらしいので楽しみである。(N)
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by NODESIGNblog | 2015-04-20 20:30
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